脚本家の夢をあきらめて改めてキャリアデザインを考える

2020年6月11日

私は、夢を諦めました。これまで13年間そのためだけに過ごしてきた、脚本家になるという夢を。私は現在35歳になりますが、大学を卒業してから、バイトをしながら脚本化を目指し続けてきました。脚本家というキャリアデザインしかなかった人生を生きてきて、夢をあきらめるという決断は私にとって大きすぎるものでしたが、そのおかげで一歩前に進めたと今は思います。

 才能がないことは、薄々自分でも感じていました。13年間シナリオコンクールに応募し続けて一回も一次選考すら通りませんでした。「夢はあきらめなければ必ず叶う」そんな言葉に救われ続けてずるずると夢を追っているうちに35歳になってしまっていました。いつかはけじめをつけなければいけないそう思ってはいても、どうしても夢をあきらめることができませんでした。「夢のために生きる日々が長く続くと、いつからか夢を盾に日々を生きてしまい、年齢は引く理由になると同時に、引くに引けん状況を作り出すから厄介。」私の好きな歌にこんな歌詞があります。まさにその通りの毎日でした。夢を追っている自分がどんなにみじめで恥ずかしいと感じても、それでもどうしても夢をあきらめることができませんでした。30歳を過ぎてもバイトして夢を追っている人への世間の冷たさは実際に体験したことがないとわからないと思います。夢をかなえることは、難しいとわかっていたけど、他のキャリアデザインなど思い描くことできず、自分の夢をあきらめることがこんなに難しいとは思ってもいませんでした。

 昔の友人に偶然再会しました。彼は昔、俳優を目指していましたが今はあきらめて実家のコンビニを継いでいます。私は脚本の取材を兼ねて彼のコンビニで、アルバイトをさせてもらうことになりました。彼はその仕事にやりがいをもっていることは見ててわかりました。彼に私が脚本家になることをあきらめようか考えていることを伝えると、彼は否定も肯定もしませんでしたが、「俺はこの仕事にやりがいを持っているし、俳優をあきらめて良かったと思っているけど、毎日毎日、もしあのまま続けていたらどうなっていたんだろう、もしかしたら成功していたんじゃないかって思ってしまう。」そう教えてくれました。

そんな時、コーチングを知りました。コーチングのお金は私には決して安い金額ではありませんでしたが、迷っている自分への投資だと思って、思い切ってコーチングを受けてみました。

「この先の未来、どんな風に生きたいですか?」とコーチは私に聞きました。

脚本家になっている、とは即答できませんでした。

「この先どう生きたいか?」と改めて真剣に考えたとき、家族の顔が浮かびました。私の両親は田舎で小さな居酒屋をやっているのですが、一昨年に父が病気で倒れてからは、母が切り盛りしていました。父は命に別状はなかったのですが前のように元気に働ける状況ではありませんでした。両親は私の脚本家になる夢を応援してくれていました。何も言わずにずっと見守ってきてくれていました。実家に帰るたびに、30歳を過ぎて何物にもなれていない娘を何も言わずに暖かく迎えてくれました。そして東京に戻るたびに駅まで送ってくれて、いつでも帰って来いよって言って、少し寂しそうな顔をしていました。私は両親と両親がこれまで続けてきたお店のことを想いました。

私は前に踏み出そうと思いました。コーチングで自分の長い人生を客観的に見たときに、私にとって大切なことは、脚本家になることだけじゃない。これからも私の人生は続いていくのだとわかりました。30代半ば、これからの新しいキャリアデザインを考えてみようとやっと思うことができました。

なんかどこかで、これまでの私の13年間に価値を見出したくて、あきらめてしまったら無駄になってしまう、脚本家になれない人生に意味がないと思っていました。けど人生はこれからも続いていくのです。脚本家への思いは消えないし、後悔し続けるかもしれません。それでも自分に向き合って、自分にとって大切なことは脚本家になるということだけじゃないと気付いたので、あきらめきれない気持ちも一緒に抱きしめたまま前に進んでいこうと思えました。その一歩をコーチが後押ししてくれました。

私のこれまでの13年間は無駄じゃなかったのかどうかはわからないけれど、確実に言えるのは脚本家を目指して本気で努力してきたからこそ感じることができた、楽しさや悔しさとか様々な感情があるし、出会えた人やできた経験があるのだと思います。

振り返ると、ほとんどはつらい日々でした、けれどまとめて考えるととっても楽しくていとおしい13年間だったと言えます。私はこのいとおしい13年間をこれからも愛していたいし、この13年間があるから新しい人生でも私はきっと生きていけると思います。

 夢をかなえる人より、かなえられない人たちのほうが多いはずです。環境によって、挑戦することすらできずに諦めていく人たちもいると思います。映画や漫画で描かれるのは、あきらめずに頑張って最後には夢をかなえる人たちです。何者にも成れずに諦めていく、描かれない側の私たちも、映画には描かれないだけで私たちの日々は美しく輝いているのだと、私はコーチングを受けて気づくことができました。

まだ自分がこれからどういうキャリアデザインを考えていくかわかっていませんが、これからも人生は続いていきます。自分にとって大切なものが、いろんな要素が重なって変わっていっただけで、そこに勝ち負けなんてないはずです。自分の大切なもののために生きている人は、それがどんなことでもどんな現状でも輝いていると、私はこの時コーチングを受けて思えるようになりました。