外資系のキャリアデザインを捨てて、女性経営者になった話



私は高校生のころから、薬学研究者になることを希望していました。

私は小さい頃から、人体のことを調べるのが大好きな変わった女の子でした。

当時流行っていた女の子向けアニメには興味も持たず、父の持っていた図鑑や薬学書を読んでいました。

ちなみに父も薬剤師。

きっと、遺伝なんでしょう。

1.研究者の道

私は高校を卒業後、薬学部へ進学します。

薬剤師の資格を取り、薬学部は卒業。

そのまま大学院へと進みます。

私はある教授の研究室へ入りました。


そこでは日々、研究者の卵たちが、社会人顔負けな忙しさで研究へ取り組んでいるのでした。

しかし私は、研究室に入ったことが原因で、研究者への道を諦めることとなりました。

なぜなら私は、周りの学生たちのレベルについていけなくなったからです。

彼らは研究に没頭し、大学で寝泊りしていました。

というか、炊飯器と電子レンジを持ち込み、半ば住み着いているような状態。

私は「これはちょっとついていけないな」と気づき、研究者の道を諦めました。

とはいえ、悲しむわけでもなく、案外すっぱりと諦められたことを、今でも覚えています。

2.P&Gへ

研究者の道を諦めた私は、就職活動へ移りました。

薬学部なので、就職先はもちろん製薬会社……のはずでした。

しかし私は、「外資系の職場を知ってみたい」という思いから、「P&G」(日本支社)の採用試験に挑みました。

奇跡的に最終段階まで生き残り、インターンへ参加することになりました。

ここから女性として、外資系としてのキャリアデザインが始まりました。

3.P&Gに入社

私は本当に申し訳ないのですが、製薬会社の内定を蹴って、P&Gへ入社しました。

P&Gは外資系らしく、男性女性という括りを気にせず、能力があれば採用する会社です。

そのおかげで私は、外資系としてのキャリアデザインを始めることができたわけです。

P&Gでは、マーケティング部門に配属されました。

当時の部門は、4割が男性、6割女性という割合で、かなり珍しく感じました。

外資系というだけあって、みんなキャリアデザインに対しては強い興味を持っています。

P&Gは、「根回し」や「社内政治」で上に上がっていける会社ではありません。

P&Gは、「Consumer is boss.」という考え方を、何よりも大事にしている会社です。

「Consumer is boss.」と、社内政治を両立するのは、絶対に不可能でした。

何をするにしても、「消費者の声はこうだ!」という根拠がなければ、意見は通りません。

社内政治などしようものなら、「それは消費者をボスとして考えていない!」と指摘されて終わりです。

私には、ある意味で正々堂々なこの社風は、素晴らしいチャンスだと感じられました。

女性に対する差別意識もなく、とにかく結果主義。

外資系らしいシビアはありましたが、とにかく社員思いの会社であり、キャリアデザインするにはうってつけだと考えていたのです。

3.妊娠と異動

しかしある日、転機が訪れました。

私の妊娠が発覚したのです。

さらに私は同時に、シンガポール支社への異動を命ぜられました。

つまり、出産・結婚・異動(栄転)の三つが、同時に重なったのです。

私は、「シンガポールには行きたくないな」と考えていました。

それを踏まえた上で、私に取れる選択肢は、ふたつありました。

1.シンガポールへの異動を受け入れ、シンガポールで育休を取る(外資系としてのキャリアデザインを優先する)

2.シンガポールへの異動を受け入れず、日本で育休を取る(女性として、母としての生き方を優先する)

結局、彼氏(のちの夫)と相談した結果、日本に残ることとしました。

つまり、会社の命令には従わなかったということです。

そのまま育休を取り、P&Gへ戻ることはありませんでした。

4.母として、経営者として

私は、母として、子供を育てることになります。

私は外資系に勤める女性としてのキャリアデザインを、ある意味で放棄しました。

そこまでドライな会社ではないので、育休取得後に復帰する道もありました。

しかし私は、女性経営者としてのキャリアデザインを選択します。

私は経営者になったとき、「起業コーチング」なるものを受けていました。

どうすれば起業して、軌道に乗せられるか? というところを教えてくれるものです。

当たり前ですが、今まで一度も経営をした経験はないので、うまく行くかどうか不安だったのです。

起業コーチングでは、「どうすれば経営者としてのキャリアデザインを描けるか?」ということを教えてもらいました。

そこで私は、「何を」「いつまでに」「どんな人へ」提供するのか、綿密に計画を立てました。

この計画があったことで、成功失敗は別として、「起業しても、かならずうまくいく!」と確信が持てたのです。

私は法人を作り、主に個人事業主相手にコンサルティングを始めました。

自分はマーケティングの経験があったので、それを活かして、コンサルティングとして提供しています。

これはコーチングで計画したとおりのことです。

今年で法人は6年目を迎えますが、成果はある程度出ています。

経営者としてのキャリアデザインという側面で言えば、決して失敗ではないはずです。

4.まとめ

私は自ら、P&Gという外資系のキャリアデザインを放棄。

そのまま女性経営者としてのキャリアデザインへと移行しました。

今の結果には、とても満足しています。

もちろんP&Gでキャリアを積むのも、ひとつの選択肢として正解だったなあ、とは思います。

しかし経営者としての働き方にも、たいへん充実しています。

コーチングをつけたというのが、大正解でした。

実務的にも精神的にも、ものすごく心強かったです。